その彼は、ミッドタウンのバーで待っていた。
一瞬・・・この人だったかしら。と立ち止まった。
Sprungli 仮に彼をこう呼ぼう。
たまたまスイスから出張で日本に来ていた彼とは、去年ふとしたことで知り合った。
その時、5分か10分ぐらいしか話はしていなかったけれど・・・その後彼からディナーに誘われた。
丁度予定が合わずお断りした。
しかしそれから時々メールが来ていた。
私はというと、はっきり言ってあまり彼のことはきちんと覚えていなかった。
でも彼は時折、春のお知らせ、天候の話、5月に日本に来る予定があること、その後日本に住む予定だとか・・・そういう他愛のないことを私にメールをしてきていた。
私は、気が向いたときだけメールに返信をした。
その彼から、3週間ぐらい前に又メールが来た。
『僕、東京に行きます。あなたと絶対に会いたい。都合の良い日を教えてください。』
彼は東京にいる予定の日を全て書き出してその中から都合の良い日を選んで欲しいと言ってきた。
誠実な態度だった。
「久しぶり、お元気でした?」
そう言った私を見た彼は嬉しそうに微笑んだ。
・・・思い出した。彼は私が昔付き合っていたイタリアの彼に似ていたんだ。
笑うと、本当に似ていた。
パリッとシャツを着こなすところが又似ていた。
彼は私に1つの箱を手渡した。
『お土産です。』
・・・それが、Sprungli スイスのチョコレート。